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最高裁判所第三小法廷 昭和59年(オ)1100号 判決 1985年3月26日

上告人

林朝清

被上告人

シチズン時計株式会社

右代表者

山崎六哉

右訴訟代理人

石川正明

三宅雄一郎

高木権之助

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

所論の点に関する原審の事実認定は、記録に照らし、正当として是認することができる。そして、右事実関係のもとにおいて、

昭和六〇年三月二六日判決 昭和五九年(オ)第一一〇〇号

(1)  商法二六九条の規定の趣旨は取締役の報酬額について取締役ないし取締役会によるいわゆるお手盛りの弊害を防止する点にあるから、株主総会の決議で取締役全員の報酬の総額を定め、その具体的な配分は取締役会の決定に委ねることができ、株主総会の決議で各取締役の報酬額を個別に定めることまでは必要でなく、この理は、使用人兼務取締役が取締役として受ける報酬額の決定についても、少なくとも被上告会社のように使用人として受ける給与の体系が明確に確立されており、かつ、使用人として受ける給与がそれによつて支給されている限り、同様であるということができる、(2) 右のように使用人として受ける給与の体系が明確に確立されている場合においては、使用人兼務取締役について、別に使用人として給与を受けることを予定しつつ、取締役として受ける報酬額のみを株主総会で決議することとしても、取締役としての実質的な意味における報酬が過多でないかどうかについて株主総会がその監視機能を十分に果たせなくなるとは考えられないから、右のような内容の本件株主総会決議が商法二六九条の脱法行為にあたるとはいえない、(3) 代表取締役以外の通常の取締役が当該会社の使用人を兼ねることが会社の機関の本質に反し許されないということもできない、とした原審の判断もまた、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はなく、所論引用の判例の趣旨に抵触するところもない。右違法のあることを前提とする所論違憲の主張は、失当である。論旨は、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(木戸口久治 伊藤正己 安岡滿彦 長島敦)

上告人の上告理由<省略>

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